箱根完全ガイド

絶景と文化を120%楽しむためのエチケット&スポット

目次

はじめに:箱根へようこそ!単なる観光ガイドではない、特別な旅の作り方

第1章:時を超えて愛される箱根:その歴史・文化と最新情報

1-1. 「天下の険」から国際リゾートへ:箱根の歴史物語

1-2. 伝統の技と信仰:箱根に息づく文化

1-3. 【2025年最新】進化し続ける箱根の注目スポット


第2章:旅の準備と基本情報:スマートに旅する第一歩

2-1. 東京から箱根へのアクセス

2-2. 箱根内の交通手段:乗り物もアトラクション

2-3. 最強の味方「箱根フリーパス」の賢い使い方と注意点


第3章:【エリア別】人気観光スポットと知っておくべきエチケット

箱根湯本エリア:温泉街の歩き方と食べ歩きのエチケット

宮ノ下・小涌谷エリア:歴史とアート、温泉テーマパークでの心得

強羅・仙石原エリア:雄大な自然とアートを静かに楽しむ

芦ノ湖・元箱根エリア:聖なる場所と絶景での振る舞い


第4章:これだけは押さえたい!箱根を満喫するためのテーマ別マナー集

4-1. 温泉編:日本の「お風呂文化」完全ガイド(タトゥーについても解説)

4-2. 食事編:美味しい体験をより豊かにするテーブルマナー

4-3. 交通機関編:スムーズで快適な移動のために

4-4. 自然・環境編:美しい箱根を未来に残すために


第5章:旅のプランニング:マナーを実践するモデルコース

5-1.【1泊2日】箱根ゴールデンルート 王道コース

5-2. 【2泊3日】アートと自然をじっくり満喫コース


おわりに:最高の思い出を持ち帰るために


はじめに:箱根へようこそ!単なる観光ガイドではない、特別な旅の作り方

はじめに:箱根へようこそ!単なる観光ガイドではない、特別な旅の作り方

東京からわずか90分。雄大な自然、湧き出る温泉、世界レベルの美術館、そして霊峰・富士山の絶景が待つ場所、それが箱根です。この地は、何世紀にもわたり日本の人々を癒し、インスピレーションを与えてきました。

このガイドは、箱根の素晴らしい観光スポットを紹介するだけではありません。あなたがこの土地の美しい文化や習慣を深く理解し、敬意を払うことで、ありきたりな観光旅行を、より豊かで忘れられない「体験」に変えるためのお手伝いをします。

少しの心遣いとマナーを知ることは、窮屈なルールに縛られることではありません。それは、あなた自身がより快適に過ごし、地元の人々と心を通わせ、旅の思い出を最高のものにするための魔法の鍵なのです。さあ、あなただけの特別な箱根の旅を始めましょう。


第1章:時を超えて愛される箱根:その歴史・文化と最新情報

箱根の魅力を深く味わうためには、その背景にある歴史や文化を知ることが近道です。かつての旅人が越えた険しい道に思いを馳せ、現代へと続く文化に触れることで、目の前の風景はより一層、色鮮やかに映るでしょう。

1-1. 「天下の険」から国際リゾートへ:箱根の歴史物語

1-1. 「天下の険」から国際リゾートへ:箱根の歴史物語

箱根が歴史の表舞台に登場するのは、奈良時代(710-794年)に箱根神社が創建されてからです。しかし、その名を不動のものにしたのは江戸時代(1603-1868年)。日本の大動脈であった東海道に「箱根関所」が置かれ、交通の要衝となったのです。歌に「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と詠われたように、急峻な山道は「天下の険」と称され、旅人にとって最大の難所でした。当時の旅人たちは、現在の箱根湯本や芦ノ湖畔の宿場町で疲れを癒し、次の旅へと備えました。

明治時代(1868-1912年)に入り関所が廃止されると、箱根は新たな時代を迎えます。温泉の効能が知られるようになり、保養地・避暑地として注目を集めました。特に、外国人専用のホテルとして開業した「富士屋ホテル」は、多くの外国人富裕層や文化人を魅了し、箱根が国際的なリゾート地へと変貌を遂げる礎を築きました。大正時代には箱根登山鉄道が開通し、誰もが気軽に訪れることができる観光地として、現在の賑わいの基礎が形作られたのです。

1-2. 伝統の技と信仰:箱根に息づく文化

箱根の旅では、古くから受け継がれる文化に触れる機会が多くあります。

  • 箱根寄木細工: 様々な種類の木材が持つ自然の色合いを活かし、精巧な幾何学模様を作り出す伝統工芸品です。その歴史は古く、江戸時代後期に畑宿(はたじゅく)で始まったとされています。小物入れやコースターなど、お土産に最適な逸品が数多くあります。
  • 山岳信仰: 箱根は古くから神々が宿る霊山として崇められてきました。その中心が、芦ノ湖畔に鎮座する箱根神社です。駒ヶ岳山頂の元宮(もとつみや)は、箱根連山の最高峰である神山(かみやま)を拝むための場所であり、この地の自然そのものが信仰の対象であったことを物語っています。
  • 芸者文化: 箱根湯本は、今なお芸者文化が息づく街です。旅館やホテルで、踊りやお座敷遊びといった日本の伝統的なおもてなしを体験することもできます。

1-3. 【2025年最新】進化し続ける箱根の注目スポット

歴史と伝統を大切にしながらも、箱根は常に進化を続けています。近年オープン、またはリニューアルした注目のスポットをご紹介します。

  • 大涌谷「ちきゅうの谷」(2025年4月25日オープン): 箱根火山の息吹を間近に感じられる大涌谷に、新たな展望エリアが誕生しました。足元がスケルトンになった「息吹のデッキ」など、五感で地球のエネルギーを体感できるスリリングな仕掛けが満載です。
  • 箱根駒ヶ岳 芦ノソラ(2025年4月25日リニューアルオープン): 芦ノ湖畔からロープウェーで登った山頂エリアが、絶景展望スポットとして生まれ変わりました。寝転がれるネットベンチや巨大なフォトフレームが設置され、富士山と芦ノ湖が織りなすパノラマを心ゆくまで満喫できます。
  • HAKONATURE BASE(ハコネイチャー・ベース)(2024年オープン): 箱根湯本に誕生した新たな複合施設。クラフトビール醸造所併設のパブや、アクティビティの拠点となるスペースがあり、新しい箱根の楽しみ方を提案しています。

これらの新しいスポットは、古くからある名所と組み合わせることで、あなたの旅をより一層豊かなものにしてくれるでしょう。


第2章:旅の準備と基本情報:スマートに旅する第一歩

2-1. 東京から箱根へのアクセス

  • 特急ロマンスカー(小田急線): 新宿駅から直通で箱根湯本駅まで最短75分。全席指定で快適な旅が楽しめます。展望席は特に人気なので、早めの予約がおすすめです。
  • 新幹線(JR): 東京駅や品川駅から新幹線で小田原駅まで行き(約35分)、そこから箱根登山電車に乗り換えて箱根湯本駅へ向かいます(約15分)。
  • 高速バス: 新宿駅や東京駅から箱根の各エリア(仙石原、芦ノ湖など)へ直行するバスもあります。荷物が多い場合に便利です。

2-2. 箱根内の交通手段:乗り物もアトラクション

2-2. 箱根内の交通手段:乗り物もアトラクション

箱根の魅力は、そのユニークな乗り物を乗り継いで周遊することにもあります。

  • 箱根登山電車: スイッチバックを繰り返しながら急勾配を登る、日本有数の本格的な山岳鉄道です。
  • 箱根登山ケーブルカー: 強羅駅から早雲山駅までの急斜面を結びます。
  • 箱根ロープウェイ: 早雲山から大涌谷を経由し、桃源台までを結びます。空から見下ろす火山の噴煙や芦ノ湖、富士山の景色は圧巻です。
  • 箱根海賊船: 芦ノ湖を優雅に渡る豪華な観光船。湖上からの景色を楽しめます。
  • 各種バス: 箱根の隅々まで網羅するバス路線は、美術館や細かいスポットを巡るのに不可欠です。

2-3. 最強の味方「箱根フリーパス」の賢い使い方と注意点

箱根を周遊するなら、「箱根フリーパス」の購入を強く推奨します。

  • 内容: 上記の主要な乗り物(ロマンスカーの特急料金は別途必要)が指定期間中(2日間または3日間)乗り放題になるほか、多くの観光施設で割引が受けられます。
  • 購入場所: 新宿駅などの小田急線主要駅、小田原駅、箱根湯本駅などで購入できます。
  • 賢い使い方: このパスを使えば、切符を買う手間が省け、交通費を気にせず自由に旅程を組むことができます。「少し先のあの場所まで行ってみよう」という気軽な寄り道も可能です。
  • 注意点: 利用開始時に改札でスタンプを押してもらいます。自動改札ではなく、駅員がいる窓口で見せてください。有効期限と利用可能エリアを事前に確認しておきましょう。


第3章:【エリア別】人気観光スポットと知っておくべきエチケット

箱根湯本エリア温泉街の歩き方と食べ歩きのエチケット

箱根湯本エリア: 温泉街の歩き方と食べ歩きのエチケット

箱根の玄関口である箱根湯本は、活気あふれる温泉街です。駅前には土産物店や飲食店が軒を連ね、歩いているだけで心が躍ります。

知っておくべきエチケット:

  • 食べ歩きのマナー: 歩きながら食べるのは他の歩行者の迷惑になるため、基本的には、商品を購入したお店の前や、指定されたイートインスペースで食べるのがマナーです。食べ終わった後の串や包装紙は、購入したお店のゴミ箱に捨てるか、持ち帰りましょう。
  • 狭い道での歩き方: 商店街は道が狭く、多くの人で混雑します。横に広がって歩かず、他の人が通りやすいように配慮しましょう。
  • 浴衣(Yukata)での外出: 旅館の敷地内や、そのすぐ近くの温泉街を散策する程度であれば浴衣で歩いても問題ありませんが、電車やバスに乗って他のエリアの美術館やレストランに行く際は、私服に着替えるのが一般的です。

宮ノ下・小涌谷エリア歴史とアート、温泉テーマパークでの心得

レトロで落ち着いた雰囲気が漂う宮ノ下と、家族で楽しめる小涌谷。ここでは、歴史的建造物やアートに敬意を払い、公共の場での振る舞いが求められます。

知っておくべきエチケット:

  • 歴史的建造物での振る舞い: 富士屋ホテルのような場所では、大声で話したり走り回ったりせず、静かにその歴史の重みを感じましょう。古い調度品や建具には、むやみに触れないようにしてください。
  • 美術館での鑑賞マナー: 屋外の作品でも、基本的には触れてはいけません。写真撮影については、施設ごとのルールを必ず確認してください。フラッシュ撮影は作品を傷めるため、ほとんどの場所で禁止されています。
  • ユネッサンでのルール: 水着着用の「ユネッサン」エリアと、裸で入る「森の湯」エリアは明確に分かれています。ルールをよく確認しましょう。

強羅・仙石原エリア雄大な自然とアートを静かに楽しむ

強羅・仙石原エリア: 雄大な自然とアートを静かに楽しむ

強羅は洗練されたリゾート地、仙石原は広大なすすき草原で知られる自然豊かなエリアです。ここでは、自然環境への配慮が特に重要になります。

知っておくべきエチケット:

  • 自然を敬う心: すすき草原や公園を散策する際は、必ず整備された遊歩道を歩きましょう。植生保護のため、ロープを越えて中に入ることは固く禁じられています。
  • 静かな環境を楽しむ: これらのエリアは、静けさそのものが魅力です。大きな声での会話は控え、自然の音に耳を澄ませてみてください。
  • ゴミは持ち帰る: 美しい景観を保つため、箱根全体でゴミ箱の設置は最小限になっています。自分が出したゴミは、必ず持ち帰りましょう。

芦ノ湖・元箱根エリア: 聖なる場所と絶景での振る舞い

箱根観光のハイライトとも言える芦ノ湖エリア。富士山を望む絶景、荘厳な神社、そして火山の活動を感じる大涌谷が集まっています。

知っておくべきエチケット:

  • 乗り物での配慮: 海賊船やロープウェイでは、窓際やデッキの良い場所を長時間独占せず、他の乗客と譲り合って景色を楽しみましょう。
  • 神社での参拝方法: 箱根神社は神聖な場所です。手水舎で手と口を清め、拝殿の前では「二礼二拍手一礼」が基本の作法です。
  • 大涌谷での注意事項: 大涌谷は火山活動地帯です。喘息や気管支疾患、心臓疾患、妊娠中の方などは、健康への影響を考慮し、立ち入りが制限される場合があります。現地の看板や係員の指示に必ず従ってください。

第4章:これだけは押さえたい!箱根を満喫するためのテーマ別マナー集

4-1. 温泉編:日本の「お風呂文化」完全ガイド(タトゥーについても解説)

4-1. 温泉編:日本の「お風呂文化」完全ガイド(タトゥーについても解説)

温泉(Onsen)は箱根旅行の最大の楽しみの一つですが、日本人にとって特別な場所であり、独特のルールが存在します。

  1. 入浴前に: 脱衣所で衣服をすべて脱ぎます。タオル大小2枚を持ってお風呂場へ。
  2. かけ湯: 湯船に入る前に、必ず「洗い場」で「かけ湯」をして体の汚れを落とします。シャワーで全身をきれいに洗うのが理想です。
  3. 湯船では静かに: 湯船はリラックスする場所です。泳いだり、大声で騒いだりしてはいけません。
  4. タオルは湯船に入れない: 衛生上の理由から、長いタオルも小さいタオルも湯船の中に入れてはいけません。小さいタオルは、頭の上に乗せるか、浴槽の脇に置いておきます。
  5. タトゥーについて:日本では、タトゥーがある人の大浴場への立ち入りを禁止している施設がまだ多くあります。貸切風呂(家族風呂)の利用や、タトゥーフレンドリーな施設を事前に探す客室に温泉風呂がある部屋を選ぶなどの対策を検討しましょう。

4-2. 食事編:美味しい体験をより豊かにするテーブルマナー

  • 旅館での食事: 夕食時に浴衣を着用するのは一般的で、リラックスした雰囲気で楽しめます。
  • 箸(Hashi)の使い方: 「刺し箸」(料理に箸を突き刺す)、「迷い箸」(どれを食べようか料理の上で箸を動かす)などは避けましょう。
  • 器の扱い: ご飯茶碗やお椀など、手のひらに収まる小さな器は、持ち上げて食べるのが正しいマナーです。

4-3. 交通機関編:スムーズで快適な移動のために

  • 乗車待ち: 電車やバスを待つ際は、指定された場所で列に並びます。降りる人が先、乗る人はその後です。
  • 車内での過ごし方: 大きな声での会話や、携帯電話での通話は控えましょう。リュックサックは前に抱えるか、足元に置きましょう。

4-4. 自然・環境編:美しい箱根を未来に残すために

箱根の大部分は「富士箱根伊豆国立公園」という国立公園に指定されています。

  • ゴミゼロの意識: 「来た時よりも美しく」という意識を持つことが、この素晴らしい自然を守ることに繋がります。
  • 野生動物への配慮: 野生の猿やイノシシに遭遇することがあっても、絶対に餌を与えないでください。
  • ドローンの使用: 国立公園内でのドローンの飛行は、厳しい規制があります。飛ばす前には必ずルールを確認してください。


第5章:旅のプランニング:マナーを実践するモデルコース

5-1. 【1泊2日】箱根ゴールデンルート 王道コース

  • 1日目新宿駅からロマンスカーで箱根湯本へ → 荷物を預け、湯本商店街を散策 → 箱根登山電車で強羅へ → 強羅公園を散策 → 強羅の旅館にチェックイン → 温泉マナーを守って、ゆっくり温泉を堪能
  • 2日目強羅からケーブルカーとロープウェイを乗り継ぎ大涌谷へ → ロープウェイで桃源台へ → 芦ノ湖で箱根海賊船に乗船 → 元箱根港で下船し、箱根神社を参拝 → バスで小田原駅または箱根湯本駅へ → 帰路へ

5-2. 【2泊3日】アートと自然をじっくり満喫コース

  • 1日目東京からバスで仙石原へ → ポーラ美術館でアート鑑賞 → すすき草原を散策 → 仙石原エリアのホテルに宿泊
  • 2日目バスで移動し、彫刻の森美術館をじっくり楽しむ → 宮ノ下へ移動し、富士屋ホテルでランチやカフェタイム → 強羅へ移動し、箱根美術館の苔庭に癒される → 強羅の旅館に宿泊
  • 3日目1泊2日コースの2日目と同様に、ゴールデンルート(大涌谷→芦ノ湖)を巡る → 箱根湯本でお土産探し → 帰路へ


おわりに:最高の思い出を持ち帰るために

おわりに:最高の思い出を持ち帰るために

このガイドで紹介した数々のマナーやルールは、あなたを縛るためのものではありません。むしろ、これらは日本人が大切にしている「他者への思いやり」や「自然への敬意」の表れです。

これらの心遣いを少しだけ意識することで、あなたは単なる「観光客」ではなく、この地の文化を尊重する「良き旅人」として、地元の人々にも温かく迎え入れられるでしょう。それはきっと、あなたの箱根での体験を、何倍も深く、価値あるものにしてくれるはずです。

美しい景色、心地よい温泉、そして人々の優しさに触れる、最高の旅になりますように。どうぞ、箱根で忘れられない思い出をたくさん作ってください。